性感染症と不妊・子宮外妊娠・流早産の関係


性感染症と不妊

 不妊症を引き起こす要因のうち、とりわけ重視しなければならないのは性感染症です。 性感染症が不妊症の要因で あることを否定する医者はいません。 性感染症によって引き起こされる卵管の癒着や炎症などが不妊を引き起こす のです。 不妊の患者さんを診察する時に、医者はまず最初に性感染症になっていないかを疑うのです。

 例えば、赴任を引き起こす性感染症の代表格にクラミジアがあります。 クラミジアの症状については、 性器クラミジア感染症の欄で述べたように、自覚症状はほとんどありません。 放置しておく と、膣から感染が始まり、子宮頸管、子宮内膜、卵管、さらに卵巣、腹膜へと炎症が進んでいきます。 卵管の炎症の ために卵管が閉塞してしまった場合には、精子は通過できません。 たとえ癒着の程度が軽くて、精子が卵管膨大部に 達して、卵子と受精できたとしても、受精卵がスムーズに子宮に移動できません。 その結果、不妊や子宮外妊娠に なってしまうのです。

 不妊症で婦人科の診察を受けて、初めてクラミジアであることに気づくケースも少なくありません。 そして、気づいた時 には慢性化していることもあるのです。

 ちなみに卵管は細菌に対して非常に抵抗力の弱い器官です。 クラミジアだけではなく、淋菌や大腸菌、その他の細菌 感染でも炎症をおこします。 実際に、ひと昔前までは淋菌が原因で不妊症になる人が多かった時代があり、それ以前 には、結核菌が卵管や子宮に感染して炎症や癒着を起こし、不妊症の原因を作っていたこともありました。
 しかし、現在は性器結核や淋菌感染症が減少している一方で、クラミジアは猛威をふるい、それに伴う不妊症が増加 しているのです。

不妊症の治療

 不妊の治療は、まず不妊の原因となる男性因子、女性因子、またはそのパートナーにとっての特有の因子を明らかに し、発見された疾病を治療することが先決です。

 たとえば子宮筋腫や子宮内膜症が不妊症の原因になっているのであれば、最初にこれらの病気を治さなければなりま せん。 もちろん必要であれば手術を受けなければなりません。
 また、性感染症が原因であれば、まず、それを治療しなければなりません。
 かりに、クラミジアが原因で卵管の癒着を引き起こしたのであれば、最初にクラミジアそのものを治療します。 幸い最近 、クラミジアの治療薬の質が飛躍的に向上したので、治療はさほどむずかしくはありません。


 しかし、問題はいったん閉塞した卵管を元の状態に戻すことです。 卵管は、炎症などによって一度ふさがると、自然に 元に戻ることはありません。 治療をしても重症の場合には、必ずしもうまくいくとは限りません。 特に閉塞している箇所の 広範囲のものや、重症である症例では、完治するまでに時間がかかったり、完治し得ない場合もあるのです。

 卵管が閉塞しているかどうかを調べる方法はいくつかありますが、代表的なものに卵管造影法があります。 これは 簡単にいえばレントゲン撮影です。 造影剤を外子宮口から注入して子宮食腔・卵管を通っていく様子をX線で確認し ます。 その他、炭酸ガスや生理食塩水に色素を加えて外子宮口から子宮腔を経て卵管に注入して、通過するかどうか を調べる方法などもあります。 症状が軽い場合には、これが治療にもなります。 腹腔鏡による子宮、卵管の観察も 重要な検査であり、卵管の閉塞は重症になれば手術が必要になりますが、治療成績が良好とはいえません。

 また、治療が成功して卵管の閉塞そのものは改善し、卵管の通りがよくなっても、たとえばぜん動運動や繊毛運動が 回復しなければ、受精卵はうまく運ばれないなど、卵管は非常にデリケートな臓器だけに、治療も一筋縄ではいかない のが実状です。

性感染症と子宮外妊娠

 子宮外妊娠とは、正常な胎児の発育場所である子宮腔以外の場所に受精卵が着床することです。 その中では、卵管 妊娠の頻度が最も高く、子宮外妊娠の98%を占めます。

 感染症などで、卵管が閉塞しないまでも、通りが悪い場合、受精卵が子宮に達する前の段階で、着床することがあります。  これが子宮外妊娠の一つ、卵管妊娠と呼ばれるものです。 この場合、胎嚢が破裂したり、卵管が破裂して胎嚢が飛び 出したりします。 そうすると卵管から大出血が起こり、命にもかかわることがあります。

 かつて子宮外妊娠は妊産婦死亡原因の第三位でしたが、現在では尿中の絨毛性ゴナドトロピンの検査(妊娠反応)と 超音波検査で早期に発見できるので、多くの場合、治療が可能になりました。

性感染症と早流産

感染症と流産

 流産は妊娠22週未満に妊卵や胎児が子宮の外に排出されたり、子宮内で死亡して、正常な妊娠の経過が停止した 場合を言います。

 妊娠初期の流産の原因は、胎芽、胎児の染色体異常、発育異常、奇形によるものが多いのですが、母体の感染症に よるものも少なくありません。 母体の感染症には、全身的な感染と局所的な感染(性器の感染)とがあります。

 病原体の全身的な感染により、39〜40度の高熱になると、子宮内の胎児が死亡することがあります。 このときは、 病原体の種類にかかわらず、高熱が流産の原因となります。

 母体の血液中に病原体が侵入し、血液とともに全身を循環する時には、病原体が子宮内の胎児へも侵入し、胎児感染 により胎児が死亡したり、死亡を免れても感染により特有の病態に陥った新生児が生まれることがあります。 このような 病態をきたす病原体には、梅毒トレボネーマ、風疹ウイルス、パルボウイルス、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、 単純ヘルペスウイルスなどがあります。


感染症と早産

 早産は、妊娠22週以降から37週未満に分娩することをいいます。

 最近、低体重児の出産が増えています。 その原因の一つが早産の増加であり、早産の原因として大きな注目を集めて いるのが、膣および子宮頸部の感染です。

 普通、膣内は病原性を発揮する細菌の繁殖を抑えるためにpH3〜4ぐらいの酸性に保たれています。 しかし、性行為 やその他の原因で「乳酸桿菌を主とする膣内正常菌叢が、複数の菌種におきかわった状態」になることがあり、これを 細菌性膣症と呼んでいます。 妊婦における細菌性膣症の頻度は10〜30%といわれ、このような 妊婦では、早産の確率が1.5〜7倍にもなっています。
 細菌性膣症をおこす病原体には性行為で伝播することもあるもの(モビルンクス、膣ガルドネルラ、マイコプラズマ、ウレア プラズマ)と、性行為感染症病原体ではないもの(バクテロイデス、ペプトストレプトコッカス、コリネバクテリウム)などが知られ ています。 細菌性膣症はそのほとんどが無症状であることから、妊娠中に気づかれることなく経過し、早産の徴候で 初めて診断されることがあります。

 妊娠すると、母体の細菌感染への抵抗力が下がるので、頸管内で細菌が増えて、病原性を発揮するようになります。  すなわち、まず頸管炎となります。 細菌が頸管内を上昇し、内子宮口に達すると、胎児を包んでいる脱落膜に炎症を おこします。 その結果、子宮を収縮させる働きを持っているプロスタグランジンというホルモンが出て、子宮収縮が始まり ます。 お腹がはってきたり、時間をおいて子宮の壁がかたくなります。 これが早産の始まりです。 その結果、羊水の 内圧が上昇し、子宮の出口へ圧力をかけ、子宮口を拡大させ、頸管を短くします。
 また、細菌感染が絨毛膜、羊膜へ及ぶと、絨毛膜羊膜炎をおこし、普段は圧力に強い羊膜がもろくなり、破れて羊水が 流れ出て、早産が始まるのです。

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